73.

なぜか覚えている話シリーズ

 

ホットスナック

 

高校のハンドボール部で練習試合に行ったとき、コンビニで昼飯を買う機会があった。その際に、ヤギヌマとウエクサ(敬称略)という先輩とばったりコンビニで鉢会ったときの話。

 

ヤギヌマとウエクサの人となりについて簡単に説明すると、正直、あまりハンドボールは上手くなく、雰囲気的にも変な人たちだった。負けず劣らず変な人だったテルヤ(敬称略)という先輩を含めた3人(ときどきヒデアキという先輩もいる)で彼らはいつも一緒にいた。

 

だから自分がコンビニで挨拶をしたときも、怖い先輩に比べるとだいぶ簡素なものだった筈だ。無難に挨拶を済ませ、多分、自分がその時、食べたかったものをなにか選んでレジに並んだのだろう。何を買ったのかということまでは詳しく覚えていない。

 

なぜか覚えているのはレジに並んでいるときに、ひとつ前で(どういう訳か)一緒に会計を済ますヤギヌマとウエクサの以下の会話だ。

 

ヤギヌマ「すいません、ホットスナックのアメリカンドッグ1つください。おい、ウエクサ。お前もホットスナックなんか買えよ。」

 

ウエクサ「いいよ。(いらないよ。)」

 

ヤギヌマ「なんでだよ。美味いんだぞ。ホットスナック。」

 

ウエクサ「いい。(いらない。)」

 

ヤギヌマ「ちぇっ・・・」

 

以上だ。

 

ホットスナック」は読む専用の単語だと思っていた。それは今でも思っている。「ホットスナック」という単語を口に出している人間を見たのは、あれから約10年経った今でもあの一回だけだ。

 

そして、なぜ、ヤギヌマは一度、否定されてもなお、ウエクサにホットスナックを薦めたのだろうか。未だに意味が分からない。自分の好きな食べ物を友達であるウエクサにも食べさせたかったのだろうか。しかも、わざわざ「ホットスナックアメリカンドッグ」と、強調している意味も未だに全く分からない。最後、舌打ちまでしているし。

 

あの時、目撃した会話の強烈な違和感をコンビニのレジ横に並ぶホットスナックを見るといつも思い出す。